注目の新指数JPX日経400 高ROE経営が変える相場

企業の自己資本利益率(ROE)や営業利益などに着目した株価指数「JPX日経インデックス400」の算出が始まって6日で半年を迎える。世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) が国内株の運用成績の指標に取り入れたほか、5月末には同指数と同じ値動きを目指す投資信託の運用資産が1000億円を突破。市場で存在感を増している。 高ROE銘柄は海外投資家を中心に人気が高い。同指数の台頭をきっかけに上場企業の間に資本効率重視の経営が広がれば、日本株全体にとっても追い風が吹く 可能性がある。

■株価4割上昇の銘柄も

「ROE向上を経営目標に据える企業が増えている」。野村証券の伊藤高志エクイティ・マーケット・ストラテジストは強調する。きっかけの一つがJPX日経 400の存在だという。ある証券アナリストのもとには、担当先の企業から「ROEを上げるにはどんな経営をすればいいのか」との相談が多く舞い込む。日本 株で運用する投信などがJPX日経400をベンチマーク(運用指標)とすることは、指数に採用される側の企業にしてみれば「株主構成の長期安定につなが る」(国内証券)利点がある。「優れた収益性」へのお墨付きを与えられたともいえ、継続的な株価上昇を目指す上では効果的というわけだ。

実際、JPX日経400の値動きは良好だ。同指数の算出が始まった1月6日から7月1日までの騰落率を比べると、日経平均株価が3.7%安、東証株価指数(TOPIX)が1.2%安なのに対し、JPX日経400の下落率は0.6%にとどまる。TOPIXが年初来安値を付けた4月14日前後や、株式相場全体が回復局面にあった5月下旬は、JPX日経400とTOPIXとの成績の差が拡大。相対的な底堅さが際立っている。

JPX日経400の採用銘柄を個別にみても、株価が大きく上昇したものが多い。工具のネット通販を手掛けるモノタロウは 1月6日から4割余り上昇。同社のROEは36%と高水準だ。「通販サイトの競争力と利益率の高さに加え、顧客データを分析して適切な販促を実施するな ど、資金を効率的に使っている」(岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部副部長)ことがROEの高さに寄与しているという。同様に洋ゴムや富士通の株価も同期間で4割以上上昇している。

高ROE銘柄への関心が改めて高まるきっかけになったのは、5月半ばにアマダが利益の全てを株主に配分すると発表したこと。アマダ自身はJPX日経400の構成銘柄ではないが、キャッシュリッチな企業がROE向上のため資金の効率活用に乗り出す象徴的な事例となった。

■関心は「次の採用銘柄」

JPX日経400について語るアマダの岡本満夫社長(神奈川県伊勢原市)

指数の認知が進むとともに、市場の関心を集めているのが「次に採用されるのはどの銘柄か」だ。毎年8月末に構成銘柄を見直す同指数。今年は8月7日に入れ替え銘柄が発表になる予定だ。

野村証券は6月のリポートで「新規に採用が見込まれる銘柄」として28銘柄を列挙。その一つであるミネベアは前期(14年3月期)のROEが14%と、前の期の2%から拡大。今期の連結純利益は前期比15%増の240億円と2期連続で過去最高を更新する見通しで、株価は今年に入って5割上昇している。

エプソンや安藤ハザマのほか、4月に自社株買いを発表した三井造も名を連ねており、「事業の競争力が高く、株主資本の効率化を図ろうとしている」(田村浩道チーフ・ストラテジスト)企業が候補の中心だという。

ROE向上を目指そうとする企業には、政策の後押しも期待できそうだ。政府は6月24日に閣議決定した成長戦略に法人税の実効税率を15年度から数年で20%台に引き下げる目標を盛り込んだ。ROEは純利益を自己資本で除して求めるため、減税が実現すれば企業の純利益は増え、ROEの水準は切り上がる。

もともとROEの水準が高い企業は、減税によるROEの押し上げ効果が大きく出やすい。法人減税をきっかけにROEの企業間格差がさらに広がりかねない。 資金をため込んでROEが低水準にとどまっている企業に対しては「株主配当の強化などによって経営の資本効率改善を求める声が高まる可能性がある」(野村 証券の伊藤氏)という。

機関投資家と企業が対話を通じて企業価値の向上を目指す「日本版スチュワードシップ・コード」の導入も、「『物言う株主』の増加が効率化への圧力となる」(投資助言会社ケイ・アセットの平野憲一代表)という点で、企業をROE経営に向かわせる効果がありそうだ。

企業がJPX日経400に採用されるようROE改善の努力を続ければ、投資家の注目が高まる。株価上昇で資金調達やM&A(合併・買収)が容易になり一段 と前向きな事業展開ができるようになる――。こうした好循環が実現すれば株式相場だけでなく日本経済にとっても理想的だ。

■投資滞る企業生む恐れも

もちろん、いいことずくめのような話にも「死角」はある。市場では、企業が過度にROEを重視すると「投下資金に対して得られる収益が少ない案件に対して は投資が滞る可能性がある」と懸念する声がある。例えば国内で消費される日用品分野。人口減に直面する日本では需要増が見込みにくい。

特 定の業種に限らず、国内での投資が割に合わないとの判断が広がれば、生産拠点を人件費の安い海外に移す動きがさらに加速しかねない。そうなれば国内の雇用 減につながり、経済にマイナスに働くおそれがある。「空洞化」を産業の新陳代謝につなげ、利益率の高い別の産業を生み出す手立ては国全体として考えなけれ ばならない課題だ。

ただ、景気が回復し物価上昇が本格化すれば、企業がため込んでいるお金の価値はますます減っていく。政策のフォローに 頼るだけでなく、次は「企業自身が将来の企業価値向上に向けた資金の使い方を見つけ、経営効率改善への意識をさらに高めていくこと」(SMBC日興証券の 圷正嗣ストラテジスト)が肝要であるとの声は多い。

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